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「よろしく、アマサワです」
名刺を渡してきた。天沢一哉という名前だった。
海藤も名刺を交換した。
「海藤優子さんね」
「はい、よろしくお願いします」
「おう、よろしくカイちゃん」
へっ? 海藤はへの字に口を開けた。外国人タレントのような敷居のないノリは何なんだよ……と思った。
ごほん、係長が小さく咳ばらいをした。
「堂本しずるをイジメていた三人組を頼んだぞ」天沢と海藤の顔を交互に見つめ去っていった。
二人は係長の背中に頭を下げた。
「カイちゃんは、生活安全課なんだ」
天沢は名刺を眺めながらいった。
「ええ、いまは少年係に配属されてます」
「おれが不良少年で、カイちゃんみたいな子に補導されたら嬉しいだろーなー」
天沢は海藤の顔を覗きこむように見つめた。
「ちょっ、なに言ってんですか」
海藤は頬に熱を帯びたのを感じた。
「広瀬すずのお姉ちゃんみたいっていわれない?」
「いっ、いわれません」
海藤は首を後ろに引いた。
天沢はふふっと笑うと、一変して、口元に力を込めた。
「さあ、まずは被害者の学校に行ってみますか。立花第一女子高生は顔馴染みなの?」
「ええ、防犯キャンペーンなどで、たまに伺ってます。小さな活動かもしれないけど、きっと大きな未来を守るって思ってますから」
生活安全課は地域と連携していくことも仕事なのだ。
天沢は海藤を見つめ、
「心強いバディだ」
とつぶやくと、力強く歩きだした。
「あの、打ち合わせは?」
天沢の背中に問いかける。しかし返事がなかった。訝しく天沢を見つめると、彼はイヤホンを耳にあてていた。
おいおい音楽聴きながら出発するかね……海藤は唖然とした。
これが警視庁捜査一課の刑事かよ、と思いながらも、天沢一哉のあとをてくてくと着いていった。
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