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前置きをほどほどにして、天沢は堂本しずるのことを訊ねていった。 中原は指で目頭を押さえてうつむいた。 「まさか……しずる……、堂本さんが殺されるなんて」 震える唇を結んでいる。 「お察しします。堂本さんはどんな生徒だったんですか?」 天沢は体育教師の赤くなった眼を見つめた。頭の中では、なぜしずると呼び捨てにしたのかが引っ掛かった。 「大人しい性格でしたが、真面目で優しくて、いい生徒でした」 紋切り型な返事だとは思ったが、こういう状況で特異なことはいえないだろうな、と想像してみた。校長から、迂闊(うかつ)なことはいうなよ、と釘を刺されているのかもしれない。 堂本しずるの学校生活を一通り聞き終えた。いわゆる地味な生徒だった。 「中原先生、直接お話を聞きたい生徒さんが数人いるのですが、よろしいですか?」 天沢の依頼に、小麦色の顔がうろたえた。 「だ、誰でしょうか? 事件となにか関係が?」焦りの色が見え隠れす。 「それは何ともいえませんが」 堂本しずるの日記から、クラスメイト三人からイジメを受けていたことが分かったが、そのことは、今は内密にしている。午後には、マスコミに公表されるかもしれない。 「先生、ここじゃ何ですので、個室を用意していただけませんか?」 天沢はまわりを一瞥してから要望した。 分かりました……、小さくいうと、中原教諭は立ち上がった。こちらへ。 先を歩く中原の肩に、天沢は手を当てた。「糸くずついてますよ、先生」 「これは失礼」中原は小さく頭を下げた。
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