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捜査会議が始まった。 藍田、鈴木、西脇の取り調べの件に集中した。引き続き、三人が犯人という線で進めていくことなった。犯行を証明できる決定的証拠と、彼女らのアリバイを徹底的に調べあげることが、当面の捜査方針の軸となった。 しかし、もうひとつの鑑取り班から、妙な情報が上がった。 堂本しずるには、多額の生命保険がかけられていたことだ。とても一般的な高校生の掛け金とは思えない額だった。当然ではあるが、その受け取り人は、母親の堂本和恵だ。自然ではあるが、どこかにおう。 講堂内に響く薄いざわめきは、和恵に対する疑いの色だった。 「その母親には、死亡推定時刻のアリバイはあるのか?」雛壇に座る管理官が、鑑取り班の刑事に訊ねた。 「はい、完璧でした。堂本和恵は新小岩のスナックで働いているんですが、夜九時から朝の三時までは、店に確実にいました。防犯カメラでも立証されました」 ううん……雛壇のお偉方、講堂内の捜査員が低い声で唸った。母親に対する疑いは瞬時に雲散霧消(うんさんむしょう)となったのだ。 様々な推理が飛び交った会議は、最終的には大きく二つの線で進められることとなった。 堂本しずるのクラスメイト三人の決定的証拠、そして、母親和恵の人間関係の洗い直しだ。和恵が犯人と関係があるかもしれないとなったからだ。 捜査会議は終了した。 しかし講堂内は、しばらく熱が立ち込めていた。 「まさか、母親まで怪しいことになるとはですね」海藤は隣の天沢に目をやった。 「そうだな……」天沢は腕を組み、何かを考え込んでいるようだった。 「何考えてるんですか?」 「まだ、見えないことが多すぎる」 唇を一文字にする天沢の表情は険しかった。 何を考えているのだろうと海藤は思った。見えないこと――単に三人組と堂本和恵のアリバイのことだろうか。 「明日また、学校に聞き込みですね」 ああ……、天沢の首肯(しゅうこう)は容疑者のことを指しているようには思えなかった。 視線はどこか遠くにあった。
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