【5】

3/7
前へ
/70ページ
次へ
「ここにいるのお邪魔だったかしら?」海藤がその女子高生に訊ねた。 「ちがいます、ちがいます」 小動物のようにコミカルにかぶりを振った。 「もしかして、お二人は刑事さんですか?」 リスのような女子高生は天沢と海藤の顔を交互に見つめた。その目の中で、好奇心がダンスしていた。 「そうだけど、何か?」天沢が答えた。 生活安全課の海藤は正式には刑事ではないが、天沢は流すようにそう答えた。海藤も特に気にしていなかった。 「堂本さんが殺されたことで、聞き込みされてるんですよね? ね、ね?」 今にも飛びはねそうな挙動をしていた。 「それが刑事の仕事ですから」天沢は落ち着いていった。 「この体育館で待っている……ってことは、中原先生に話あるんじゃないですか?」 リス少女のニヤリ顔はアニメのキャラクターのようだった。 「堂本さんの担任でもあるしね」 「わたしですねー、中原先生と堂本さんの噂知ってるんですよお」 「えっ?」天沢はリスの白い歯を見つめた。 噂……まさか。 読みが当たったかもしれないと思った。中原大輔に聞き込みに来たのは、イジメ三人組のことが主ではなかった。中原と堂本の関係のことだった。そのことを、さきほど海藤に言いそびれたのだ。 女子高生は、小川くるみ、と自己紹介してくれた。堂本しずるとクラスは違うが、噂好きの性格で、教師や生徒のディープな情報を入手することに奮闘していた。 「場所を変えようか」天沢は海藤にも視線を送った。海藤は頷いてから、小川くるみのにんまりした顔を見た。  
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

303人が本棚に入れています
本棚に追加