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「ここにいるのお邪魔だったかしら?」海藤がその女子高生に訊ねた。
「ちがいます、ちがいます」
小動物のようにコミカルにかぶりを振った。
「もしかして、お二人は刑事さんですか?」
リスのような女子高生は天沢と海藤の顔を交互に見つめた。その目の中で、好奇心がダンスしていた。
「そうだけど、何か?」天沢が答えた。
生活安全課の海藤は正式には刑事ではないが、天沢は流すようにそう答えた。海藤も特に気にしていなかった。
「堂本さんが殺されたことで、聞き込みされてるんですよね? ね、ね?」
今にも飛びはねそうな挙動をしていた。
「それが刑事の仕事ですから」天沢は落ち着いていった。
「この体育館で待っている……ってことは、中原先生に話あるんじゃないですか?」
リス少女のニヤリ顔はアニメのキャラクターのようだった。
「堂本さんの担任でもあるしね」
「わたしですねー、中原先生と堂本さんの噂知ってるんですよお」
「えっ?」天沢はリスの白い歯を見つめた。
噂……まさか。
読みが当たったかもしれないと思った。中原大輔に聞き込みに来たのは、イジメ三人組のことが主ではなかった。中原と堂本の関係のことだった。そのことを、さきほど海藤に言いそびれたのだ。
女子高生は、小川くるみ、と自己紹介してくれた。堂本しずるとクラスは違うが、噂好きの性格で、教師や生徒のディープな情報を入手することに奮闘していた。
「場所を変えようか」天沢は海藤にも視線を送った。海藤は頷いてから、小川くるみのにんまりした顔を見た。
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