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小川くるみが案内してくれたのは、屋上に通じる階段の踊り場だった。
午後の日差しが、床に楕円を縁取るように、おだやかに差し込んでいる。恋愛ドラマの高校生が愛を語り合うシーンにぴったりだな、と思った。実際にこの場所で、告白をしたり、秘め事をしている生徒もいるかもしれない。いや、女子校という環境から、イジメが多いのだろうか。
「で、中原先生と堂本さんのことを教えてくれるかな」
天沢はくるみのまん丸な瞳を見た。
え~っとですね……、くるみは階段下を一瞥し、人の気配を確認してからいった。
「ズバリ! 中原先生、堂本さんと付き合っていたのかもしれません」
「えっ」二人は驚いた。
というよりは……と、くるみは背中で手を組んで、もったいぶるように間をためた。
「中原先生が一方的に、堂本さんにイタズラしてたかもですね。イタズラって、ええっとう、そのう、あのう……性的な……ね。キャッ」
こういうところで照れてしまうのはやはり高校生だな、と天沢と思った。
なるほどね、と天沢は鼻から小さく息を吐いた。「噂とはいえ、証拠はあるのかな?」
「私の友達が見たことあるんですよ。夜中に、中原先生が堂本さんを車に乗せて走っているところを」
それに、とくるみは流暢に続ける。
「私も見たことあるんです。中原先生、体育倉庫に堂本さんを連れていって、しばらく戻ってこなかったの。出てきた時、堂本さん泣いているように見えました。付き合ってるんだったら、もっと幸せそうな顔して出てきますよね。あの表情はきっと……無理やりですよ無理やり……」
くるみは顔を歪ませながら自分の体をさすった。
「もし、本当に女子生徒に乱暴してたなら、サイテークソヤローですね!」
海藤が、急に語気を荒げた。彼女の正義感は沸騰が早い。そして口が悪い。
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