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「中原が犯人にせよ犯人じゃないにせよ、それが本当だったら取っ捕まえてやりたいですよ!」
海藤は、闘牛のような鼻息をあげた。
「堂本さんが、そのことを誰かに話していたとかは知らないかな?」
天沢はくるみの歪む顔を見る。
「うう~ん」
大きな目を宙できょろきょろさせて、くるみは思案顔になる。すると、
「あっ! 兼倉さんなら聞いてるかも」
顔がパッと閃き顔になった。
「兼倉……」天沢はその人物のことを思い出すのに数秒を要した。
「兼倉透子さんのことかな?」
「そうです。ご存知なんですね」
初めて立花第一女子校に来たときだ。面談室へと向かう途中、駆け寄ってきた生徒だ。眼鏡姿と小柄な体格が印象に残った。天沢はその経緯をくるみに話した。
「その兼倉透子さんのことも教えてくれるかな」
「兼倉さんも、イジメの対象でした」
「藍田さん達三人組からの?」
「はい、そうです。堂本さんと兼倉さんは幼い頃からの親友らしくて、いつも一緒にいました。大人しい二人の性格に目をつけて、藍田さん達がよくイジメてるのを見かけたことがあります。
堂本さんと兼倉さん、いつも一緒に行動してて、なんていうか……いわゆるクラスの根暗グループ的な感じでした」
天沢は兼倉透子を思い浮かべた。大人しくうつむきがちな視線。イジメの対象になりやすいかもしれない、と容易に想像がついた。
「ちなみに、兼倉さんはどんな人だったの? そのう、部活動だとか、趣味があったりとか」
「彼女すごいんですよ! 将棋部で、全国大会出場経験ありなんです」
「へえ~そりゃすごい」
「誰にも特技があるもんですね――」
その時、くるみの顔が驚きの色で広がった。彼女の視線は階段下に向けられていた。
天沢と海藤も階段下に目を向けた。
なんと、そこには話題の中心人物が
踊り場を見上げていた。
曇りがちな眼鏡はほこりに覆われているように見えた。
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