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「で、堂本和恵の家には着いたわけ?」
天沢は窓の外に視線を走らせる。
「もうすぐです」
海藤は頬を膨らませると、サイドブレーキをおろし、再び車を走らせた。
海藤と天沢は、堂本和恵の自宅に向かっていた。天沢が堂本和恵から話を聴きたいといったのだ。事件の捜査に行き詰まっていたのが理由だった。
中原大輔を犯人として捜査が進められていたが、ひとつ大きな壁にぶち当たった。堂本しずるの首に残った絞殺の痕と、中原の手の大きさが微妙に違っていたのだ。それは中原の手の大きさよりも小さかった。
中原には、死亡推定時刻のアリバイがない。遺体やその周辺からも中原の毛髪が見つかっている。限りなく犯人とての証拠を示していたのに、最後の一歩が届かない。
では、やはり犯人は、藍田、鈴木、西脇の三人組か――しかし、最初の容疑者達の線も掴みきれなかった。
堂本しずるの死亡推定時刻午後11時半から深夜0時半、彼女達は近くのコンビニに寄っていたのだ。店の防犯カメラが証明していた。
そして何より、堂本しずるが握りしめていたビー玉が、より捜査を混乱させてきた。中原も女子高生三人組も、そのビー玉のことなど知らなかった。
確かに、遺体に握らせるメリットなどないだろう。
掴めそうで掴めない――捜査員は皆、頭を悩ませた。
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