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そこで、天沢は新しい線を辿るべく、堂本和恵に会いに行くことを提案したのだ。 海藤はコインパーキングに車を停めた。三台しか入庫できない小さなパーキングだ。民家の前に設置されているので、家の住人はさぞ排気ガスに悩まされているだろうなと思った。 車を降りて歩いた。三分もしないうちに、堂本和恵の住むアパートが見えてきた。アパート、いや、昔ながらのコーポといった方がいいかもしれない。壁面が寂れた安普請(やすぶしん)な建物だった。辺りは住宅街で、自転車にのった中年女性が時折姿をみせるだけの閑静なものだった。 海藤は資料に目を落とし、住所を確認した。 107号室、と指して、アパートに進んだ。 天沢は、 「味のあるのアパートだねえ。温もりすら感じるよ、うん」 とアパートを眺め頷いた。 何を見ても、プラスの表現をするのがこの人の癖なのかもしれない、と海藤は思った。天沢は、今はさすがにイヤホンははめていなかった。形のいい耳に髪の毛がかかっていた。
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