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しばらく話を続けていると、天沢は二軒目に誘うことにした。 さあどうなるか? と心でつぶやき、キラキラ光る女のイヤリングを見た。 「店変えませんか? スパークリングワインと生ハムが美味しい店を知ってるんです。もちろん、牛丼の方が好きというなら、牛丼屋に向かってもけっこうですが」 女は肩を揺らして笑い声をもらした。 「そうですね、じゃあ牛丼にしましょうか?」調子を合わせ、天沢を見つめた。 「では行きましょう」 天沢はにこりと(うなず)いた。と、ちょうどその時だった。 ジャケットの内ポケットから振動を感じた。 スマートフォンを取り出し、画面を確認すると、天沢は顔をしかめた。 「ちょっと失礼」と手刀(てがたな)をきると、女に背を向けて通話した。
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