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天沢はアルバムを受けとると、パラパラとめくりだした。海藤は横から目をやった。
「本当に仲が良かったんですね。まるで姉妹みたい」
どの写真も、二人は姉妹のように仲良くくっついて笑顔を見せている。
春夏秋冬に溢れだす二人の友情。
春はお花見。夏は花火大会や夏祭り。秋は紅葉。冬は雪だるまを作ったり、炬燵で蜜柑を食べる写真。二人の仲のよさに、海藤は胸が和んだ。
親友を失い、兼倉透子も絶望の波に飲み込まれているだろう。その心の暗闇は計り知れない。
天沢がアルバムをめくり終えた。
それを和恵に返そうとした時、天沢の手が止まった。何かを思い出したように、もう一度アルバムをめくりだした。
「どうしたんです?」
海藤は刑事の横顔に訊いた。しかし、返事はなかった。険しい表情でめくっている。目的のページをさがしているようだった。
和恵も小首をかしげ天沢を見つめていた。
アルバムをめくる音が止まった。
天沢はそのページを凝視していた。一点に視線を集中し、頭の中で何かを導きだそうとしているように見えた。
その険しい表情がぴたっと砕けた。
「素敵なアルバムだ。ありがとうございます」
天沢はアルバムを和恵に返した。
「何かありましたか? このアルバムに」
和恵の声には、若干の不安が混じっていた。
「いえいえ。ちなみに、お母様も兼倉透子さんとは仲がいいんですか?」
「はい、もちろん。家族ぐるみの付き合いでしたし」
「彼女の連絡先を教えていただけませんか?」
「は、はあ」
和恵はスマートフォンを取り出し、天沢に教えた。
「ありがとうございます」
天沢はスマートフォンを小さく掲げた。
「今日は突然すいませんでした。失礼いたします」天沢は一礼した。
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