【6】

8/9
前へ
/70ページ
次へ
天沢はアルバムを受けとると、パラパラとめくりだした。海藤は横から目をやった。 「本当に仲が良かったんですね。まるで姉妹みたい」 どの写真も、二人は姉妹のように仲良くくっついて笑顔を見せている。 春夏秋冬に溢れだす二人の友情。 春はお花見。夏は花火大会や夏祭り。秋は紅葉。冬は雪だるまを作ったり、炬燵(こたつ)で蜜柑を食べる写真。二人の仲のよさに、海藤は胸が和んだ。 親友を失い、兼倉透子も絶望の波に飲み込まれているだろう。その心の暗闇は計り知れない。 天沢がアルバムをめくり終えた。 それを和恵に返そうとした時、天沢の手が止まった。何かを思い出したように、もう一度アルバムをめくりだした。 「どうしたんです?」 海藤は刑事の横顔に訊いた。しかし、返事はなかった。険しい表情でめくっている。目的のページをさがしているようだった。 和恵も小首をかしげ天沢を見つめていた。 アルバムをめくる音が止まった。 天沢はそのページを凝視していた。一点に視線を集中し、頭の中で何かを導きだそうとしているように見えた。 その険しい表情がぴたっと砕けた。 「素敵なアルバムだ。ありがとうございます」 天沢はアルバムを和恵に返した。 「何かありましたか? このアルバムに」 和恵の声には、若干の不安が混じっていた。 「いえいえ。ちなみに、お母様も兼倉透子さんとは仲がいいんですか?」 「はい、もちろん。家族ぐるみの付き合いでしたし」 「彼女の連絡先を教えていただけませんか?」 「は、はあ」 和恵はスマートフォンを取り出し、天沢に教えた。 「ありがとうございます」 天沢はスマートフォンを小さく掲げた。 「今日は突然すいませんでした。失礼いたします」天沢は一礼した。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

303人が本棚に入れています
本棚に追加