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海藤と天沢は堂本和恵のアパートを出た。
コインパーキングへと戻っていた。一匹の猫が二人の前を走り、振り向いては走り、やがて姿を消した。
「どうしたんですか?」
海藤は、思案顔で歩く天沢に訊いた。
「学校へ行くぞ」刑事の顔つきだった。海藤は、少しどきりとした。
「兼倉透子ちゃんの?」
天沢は前を見ながら頷いた。耳にはスマートフォンをあてている。
「くそっ」天沢は顔をしかめた。電話が繋がらない……」
「あの子が、なにか事件に関係してるっていうんですか?」
「まだ分からない。おれの勝手な憶測の憶測の憶測だ。ただ、彼女に話を訊きたい」
あのアルバムに何を見つけたというのだろうか。天沢は、あのアルバムのどこかに明らかに不自然な反応を示した。
「天沢さん……アルバムに何かあったんじゃないですか?」
天沢は答えなかった。無言で車に乗り込んだ。
シートベルトをかちんとセットした時、
「夏祭りの写真があった。冷えた美味しそうな飲料水を握ってたよ、二人とも」
――夏祭りの写真?
――冷えた飲料水?
それが何だというんだ……海藤は唇をくねらせながらエンジンをかけた。
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