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3-1.煌びやかな偽物たち
煌びやかな宮殿の大広間は、色とりどりに着飾った紳士淑女で溢れていた。
貴族階級に生まれた者、優秀さを買われて成り上がった者、さまざまな立場の人間がひしめく。
自分より序列が上の者を探しては取り入ろうとする。表面上は笑顔という仮面を貼り付け、裏で画策する醜い人間の集まりだった。
しかし、舞踏会は毎月の恒例行事だ。
代々受け継がれた慣習を、国王とはいえエリヤ1人の独断で中止することは難しかった。
駆け引きと互いの立場の確認、下らないと嘲笑するのは簡単だ。だが貴族達にとっては、一大事なのだろう。
それ故に、鬱陶しい挨拶を受けるだけの場でも顔を出すのだ。
「国王陛下、ご機嫌麗しゅう……」
「スタンリー伯爵」
名を呼んで、長くなりそうな美辞麗句を遮る。
どうせ挨拶程度の内容しかないのだ。無駄な時間を省く声は、退屈そうに響いた。
「隣のレディは?」
「私の姪で、サリューと申します」
先月は金髪の娘を連れていた。なかなかに整った顔をしていたが、エリヤが興味を示さないので、別の娘を連れ出したのだろう。
姪と言ったが、本当に血の繋がりがあるのか……怪しいものだ。
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