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執務に与えられた部屋を飛び出し、足音を抑えずに回廊を抜けていく。苛立ちを浮べた表情と剣幕に、誰も話しかけることが出来ない。国王の私室の前で立ち止まり、深呼吸してドアを開いた。
まだベッドに沈む幼い恋人を見つめ、ベッドの端に腰を下ろす。音もなく沈んだ上質なマットの揺れに、エリヤが薄く目を開く。
「……ウィ…ル」
名を呼んだ国王の唇を掠めたキスの後、執政としての硬い声で呼びかけた。
「陛下」
「……何があった?」
一瞬で意識を覚醒させた国王へ、国政を預かる執政の報告がなされる。
「ミシャ侯爵が殺害されました。……オズボーンの侵攻が始まります」
目を見開いたエリヤは何も言えずに、拳を固く握り締めた。
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