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「確かにミシャを殺させたのは、私よ。でもスタンリーを野放しにして煽ったあなたより、マシだと思うの……」
「どっちもどっちさ」
切り捨てて、ウィリアムが顔を伏せる。互いの主から見えない角度で、片唇を引き上げて自嘲を浮かべた。
策略こそ王宮の華――それは誰が否定しても覆らない、古からの慣習だ。
王族である以上、エリヤもリリーアリスも承知しているだろう。だが、彼と彼女の手を汚す気はウィリアムになかった。
最愛のエリヤはもちろん、ウィリアムはリリーアリスの理想論や穏やかさを認めている。自分では不可能なことを、彼女なら成すと信じられた。
目障りなオズボーンの間者や逆らう貴族共を排除する為、野心家のスタンリー伯爵を影から扇動して支援する。その愚かな計画に参加するバカを一掃する計画だった。
だから、肩のケガは自業自得――元から覚悟の上だ。もっともここまで重傷になるとは、さすがのウィリアムも予定外だったが……。
「ミシャの件は礼を言おう。優秀な駒がいるらしい」
探るウィリアムへ満面の笑みを返し、魔女らしく嫣然と微笑む。
「ええ、とても優秀よ。私が手ずから選んだ相手ですもの」
あなたに教える気はないわ。そう切り替えしたドロシアの強かさを、好ましく思うのはウィリアムの性格故だろう。
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