3-8.王宮の華は鉄さびた味

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「確かにミシャを殺させたのは、私よ。でもスタンリーを野放しにして煽ったあなたより、マシだと思うの……」 「どっちもどっちさ」  切り捨てて、ウィリアムが顔を伏せる。互いの主から見えない角度で、片唇を引き上げて自嘲を浮かべた。  策略こそ王宮の華――それは誰が否定しても覆らない、(いにしえ)からの慣習だ。 王族である以上、エリヤもリリーアリスも承知しているだろう。だが、彼と彼女の手を汚す気はウィリアムになかった。  最愛のエリヤはもちろん、ウィリアムはリリーアリスの理想論や穏やかさを認めている。自分では不可能なことを、彼女なら成すと信じられた。  目障りなオズボーンの間者や逆らう貴族共を排除する為、野心家のスタンリー伯爵を影から扇動して支援する。その愚かな計画に参加するバカを一掃する計画だった。  だから、肩のケガは自業自得――元から覚悟の上だ。もっともここまで重傷になるとは、さすがのウィリアムも予定外だったが……。 「ミシャの件は礼を言おう。優秀な駒がいるらしい」  探るウィリアムへ満面の笑みを返し、魔女らしく嫣然と微笑む。 「ええ、とても優秀よ。私が手ずから選んだ相手ですもの」  あなたに教える気はないわ。そう切り替えしたドロシアの強かさを、好ましく思うのはウィリアムの性格故だろう。     
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