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3-3.闇は後ろから忍び寄る
「お前が隠すから……」
責める口調になるのはしょうがない。
唇を尖らせて抗議する幼い恋人に、ウィリアムは小さく溜め息をついた。
無意識の媚態で誘うのはエリヤの十八番だが、誘われても手出しできないこちらの立場も考えて欲しかった。
周囲は勘違いしているが、ウィリアムはエリヤに手を出していない。
もちろん逆も有り得ない。
幼い体への負担を考えると、手出しを躊躇してしまうのだ。啼かせてみたいが、泣かせるのは嫌だった。
この蒼く澄んだ瞳を濁らせる原因になるかも知れない。そう思えば、醜い欲望を内部に押し込める痛みなど、どれほどのものだろう。
「……誘ってるの?」
唇を耳に寄せて囁いたウィリアムの低い声に、子供は身を震わせる。しかし誤魔化されはしなかった。
「どうして……」
なぜ隠すのか。それほど頼りにならないと思われているのだろうか。
確かにまだ15歳だが、ウィリアムに庇護されるだけの子供ではなかった。
「ゴメン」
悔しさと無力感に歪んだ蒼瞳が潤むのを見て、さすがに両手を上げて降参を示した。
エリヤの肩を抱いていた手を離し、椅子に座る子供に合わせて膝をつき跪く。
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