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5
修一は、歩道をよろよろと歩いていた。
腹に巻き付けたタオルが血で滲んでいる。
「痛たたっ。傷口が開いたかな、ふふっ」
痛いのに何故か笑ってしまう。
こんな俺も、やっと父親らしい事が出来たんだ。
修一は満足していた。
和美が助かって本当に良かった。
修一は足を引きずりながら、やっと森林公園に辿り着いた。
すだれを上げて、自分の寝床に転がり込んだ。
「痛ててっ」
タオルを外すと、思ったより出血しているようだ。
別のタオルを探して、腹に巻き直した。
「少し眠ればなんとかなるさ」
医師には俺の素性を知らせない様に頼んである。
上手くドナーがいたと誤魔化してくれと。
和美に俺の素性を知られて不幸にさせたく無い。
そして和美がここに来る事も、もうないだろう。
これで良かったんだ。
掛け違えたボタンは、もう元には戻せない。
過去を変える事など出来ないのだ。
和美、どうか幸せにな。
やけに喉が渇く、、。
ああ、何だか眠くなってきたなあ。
そして修一は背中に血溜まりを作ったまま、静かに目を閉じた。
終わり
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