0人が本棚に入れています
本棚に追加
ロビーに着くと、汚れた服を着た男が騒いでいた。
「頼むよ。俺の血を使ってくれ!俺もRHのマイナスなんだよ!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて!」修一に胸ぐらを掴まれて、若い医師が困惑している。
「あなた、あの子の親族なんですか?身元の分かるものが無くて連絡に困ってたんです」
「あの子の名前は島田 和美。俺は三沢と言って…」と、修一はそこで口をつぐんでしまった。
父親と分かれば、またややこしい事になりかねない。
「と、とにかく検査を…検査をしてくれ!」
とにかく時間が無い。
医師は慌てて「分かりました。検査室に来て下さい」と修一を促した。
周りの患者達は、修一の風貌に顔をしかめている。
その横目をよそに、修一は医師について行った。
検査の結果、輸血に問題が無いと分かった。
そして腎臓移植の事も、医師から聞かされた。
「勿論、俺のを使ってくれ。こう見えても身体は健康なんだ。いいか、血は出来るだけ沢山取ってくれよ!」
そして手術が始まった。
最初のコメントを投稿しよう!