1

4/4
前へ
/14ページ
次へ
「おいシュウよ。お前、最近人んちをこそこそ見回ってるそうじゃないか」 「いや、別に俺は…」 「どうせ別れた女房か子供のところだろ?」 図星を言われて、修一は黙ってしまった。 「やめとけ。もう俺ら達とは住む世界が違うんだ。 泣きを見るのはお前さんの方だぞ」 オクダイは少し笑いながら、自分の寝床へと戻って行った。 「分かってるさ、そんな事は…」 この先何もない修一にとって、和美は唯一の生きる希望でもあった。 遠くから見守るだけでいい。 それだけでも修一には十分であった。 和美は郊外の短大に通う一年生らしい。 笑った顔は、美佐子によく似ていた。 駅からの帰りだろうか。森林公園を横切る和美の姿を見かけた。 辺りの街灯も少なく、女性の一人歩きは危険だ。 修一は心配になり、後をつけた。 勿論、無事に家に帰り着くまでの間だと、自分に言い聞かせながら。 すると突然、茂みの中から男が飛び出してきて、和美に覆いかぶさって来たではないか。 「きゃっ!誰かっ」 修一は、思わず走っていた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加