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「おいシュウよ。お前、最近人んちをこそこそ見回ってるそうじゃないか」
「いや、別に俺は…」
「どうせ別れた女房か子供のところだろ?」
図星を言われて、修一は黙ってしまった。
「やめとけ。もう俺ら達とは住む世界が違うんだ。
泣きを見るのはお前さんの方だぞ」
オクダイは少し笑いながら、自分の寝床へと戻って行った。
「分かってるさ、そんな事は…」
この先何もない修一にとって、和美は唯一の生きる希望でもあった。
遠くから見守るだけでいい。
それだけでも修一には十分であった。
和美は郊外の短大に通う一年生らしい。
笑った顔は、美佐子によく似ていた。
駅からの帰りだろうか。森林公園を横切る和美の姿を見かけた。
辺りの街灯も少なく、女性の一人歩きは危険だ。
修一は心配になり、後をつけた。
勿論、無事に家に帰り着くまでの間だと、自分に言い聞かせながら。
すると突然、茂みの中から男が飛び出してきて、和美に覆いかぶさって来たではないか。
「きゃっ!誰かっ」
修一は、思わず走っていた。
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