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「やめろ!」修一は、落ちていたビニール傘の柄で男の頭を何度も殴った。
「何だ?この乞食のおっさん!」と男は修一に襲いかかって来たが、鼻先を殴られて一目散に逃げ出した。
「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
和美は何も言わず、ただ怯えていた。
修一は自分の姿にハッと気がつき、差し出そうとした手を引っ込めた。
「ご、ごめんよ。おじさんは何もしないから怖がらないで」修一はそう言ったが、和美は何も応えない。
「誰か…ご両親を呼んだら?一人じゃ危ないから」修一がそう言うと、和美は黙って頷いて携帯を取り出した。
そして携帯を切った後「おじさん、血」と和美が口を開いた。
「え?」
「おじさんの頬に血が付いてる」と和美は人差し指を修一に向けた。
修一は慌てて頬を拭うと、手に薄っすらと血が付いている。
「ああ、組み合った時に引っ掻いたんだろう。これくらい大丈夫さ」
「駄目よ。ばい菌が入ったら大変よ」と和美は近くの水道でハンカチを濡らして来た。
そしてハンカチで修一の頬の汚れを落とした後、絆創膏を貼ってくれた。
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