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ハロルドは、鏡に映っていないが、鏡に映る私には、何体かの人影が、ゆっくりと迫っている。
迫る人影にさらされた、鏡に映った私……。
その鏡に映った私に、素早く迫ってきた一体の人影。その人影が、鏡の中で私に寄り添った。
鏡の中の三つ編みお下げの少女。
「美久!」
私の声と同時に、それを確認したハロルドが、美久に言う。
「鏡の中を任せられる? こいつら相手なら、君と僕のタッグは無敵だ」
鏡の中の美久が頷いた。それを合図に、ハロルドが私の前から消えた……。
私が周りを見回すと、実体化した化け物たちが、右往左往しながら、よろけてぶっ倒れていく。殆ど目視できないが、ハロルドが、壁面を蹴りながら、ものすごいスピードで縦横無尽に飛びまわって、実体化した化け物たちを殴り倒している。
鏡の中では、美久がくノ一の如く駆けまわり、門脇さんの日本刀を振りかざして、華麗な剣捌きで、人影をなぎ払っている。
「アヤノ! 踊り場の方に走って、一階までイって!」
二人の目にもとまらぬ立ちまわりに、あっけにとられている私に、ハロルドが叫ぶ。だけど、踊り場の方に向かう廊下は、化け物だらけだ。
私が躊躇していると。
「大丈夫。信じテ、走ッて!」
ハロルドの言葉に、私は駆け出す。
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