鏡の中に何かいる

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 声も出せず、頭は混乱する。人間とも化け物とも判断のつかない何かが、目の前に存在し、その異様さに、直感的な恐怖を覚える。右半分しかない顔の右半分しかない口がゆっくりと開き、うなるような声が漏れる。 「かえせぇ……」  右半分しかない女生徒が、美久に迫る。ゆっくりとした動きだが、あまりの恐怖に体の硬直した美久は、動けずその場にへたり込む。 「あ……、あぅ……、あなた……、何……、来ないで……」  悲鳴ともつかぬ声で、囁く美久。その首に、半身の女生徒の右手が伸びる。そのまま、女生徒は美久の首を掴む。 「しんぞうを……、きょうこさま……の……、しんぞうを……、かえせぇ……」  謎の女生徒が発する言葉の意味も分からず、混乱した美久の脳裏に、親友の顔が浮かぶ。 「ひぃぃぃぃ……っ……、『あやの』……、たすけて……、『あやの』……」  引きつったような、嗚咽が漏れる。美久は、首に添えられた手が、確実に自らを死に至らしめようとしていることを感じ、恐怖する。  慌てて両手を、自らの首を締め付ける女生徒の腕に添える。その腕を引き剥がそうと、力を込めるが、妙な感覚にさらに恐怖する。目の前の女生徒は、右半身……、右手しか無いのに、両手で握りしめられているような感覚。右手は掴むことができたが、もう片方の手は掴めずに空を切る。必死に首元に手を添えるが、女生徒の左手は無い。しかし、確実に両手で首を締め付けられる感覚。     
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