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目の前の女生徒、半分しかない顔。その顔は無表情で、締め付ける腕の力は更に増していく。そして締め付けると共に、美久の体を持ち上げていく。
「うっ……、かはっ……」
呼吸が困難になり、視界がぼやける。美久はしゃがんだ状態から持ち上げられ、膝を震わせながらも辛うじて自立状態を保っている。
そのまま、少し踵が浮いて、背後の鏡に叩きつけられた。美久は体を強張らせ、反射的に眼をつぶる。
叩きつけられた衝撃を、後頭部や背中に感じた次の瞬間。何か粘度の高い液体に飲み込まれていく様な感覚で、美久の体は鏡の中へと引きずり込まれていった……。
更衣室に残っていた二人の少女。着替えを終えて、先輩である美久に一言声をかけようと、洗面所に立ち寄る。
「帰りますよ~?」
洗面所の扉を勢いよく開けて、中を見回す二人。一人の少女が、個室を覗き込みながら、奥の方に歩いていく。
「あれ? 誰もいない……。高野先輩、さっき入って行ったよね?……」
バン!
壁に何かがぶつかったような衝撃音。少女たちは、音のした方向に素早く目を動かす。
視線の先には洗面台の鏡。
その鏡には、手が映っている。
「うわ! 何?」
二人の声が重なる。
鏡を押し破ろうとするかのように、強く鏡面に押し付けられた手のひら。しかもその手は、鏡の向こう側にあるように見える。
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