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鏡の中に何かいる
放課後、とある中学校の体育館。部活動も終わり殆どの生徒が下校したが、まだ数人が残って後片付けをしていた。
残っていたのは、三人の少女。片付けを終えた少女たちは、更衣室のロッカーへ。そのうちの一人が、タオルと小物の入ったポーチを持ち、洗面所の方に向かう。
その少女の名前は、高野美久。中学三年生。バレー部のマネージャーを務める彼女は、赤い眼鏡をかけた、三つ編みおさげの小柄な少女。
他の二人は、彼女の後輩の二年生。二年生の二人は、更衣室で話しながら着替えをしている。
美久は、洗面所の扉を開ける。ギイと古めかしい音をたてて、きしむ扉。初夏の夕暮れ時。外はまだ明るかったが、日陰にある洗面所は薄暗い。蛍光灯のスイッチを入れる。少し時間をおいて明るくなりだした照明は、不規則に点滅し、チカチカと暗い洗面所を照らす。美久が目を細めながら照明を見つめていると、パチリと明るくなり安定した光を放ち出した。
一瞬、美久は人の視線を感じたように思い、ハッとする。視線を感じた方向に目を走らせたが、洗面台の鏡があるだけで、誰もいる様子はない。
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