魔法のナイフ

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あの日から彼との進展はなく、いつものように学校に向かい席に座ると、先生から友子さんが行方不明とされている事を話していた。私が犯人であることを、みんな知っているのではないかと不安になり、周りをキョロキョロと見回した。そんな時、彼の事が目に入った。彼は青ざめた表情で一点を見つめている。そして一瞬目が合い、彼は素早く目をそらした。行方不明ということは警察も動いているという事だ。私は焦っていた。警察に捕まるかもしれない (彼とクラスが一緒のうちに思いを伝いたい。あのナイフを使えば彼と近づける。) そんなことを考え、夜になり、夕食を食べていた。私の家では家族全員で夕食を食べるというルールがある。父は工事現場で働いて、母は近くのスーパーでレジをしている。最近は私の進路のことについての話をしながら夕飯を食べている。 父が「おい、お前早く就職先見つけろよ。」 「私、まだやりたい事とかないから大学行く。」 「ふざけんな。お前を大学に行かせる金なんてねぇよ。高校卒業したら働け。」 「父さんみたいになりたくないもん……」 この一言で父は激怒し、私のことを殴った。私も反撃しようとしたが女子高生が力仕事をしている男の人に勝てる訳がなく、サンドバック状態だった。 (このままだと殺される。) と思った時あのナイフが見えた。友子を刺した後、血を洗うために台所に置いてあったのだ。急いで台所に行き、ナイフを取り、こっちに迫ってくる父の心臓に、グサッ。寄りかかって倒れる父、その姿を見た母は、地面に流れている血見て、まだ現実を受け入れられていないようだ。母に 「ごめん。私……」 その瞬間、母が私の首を絞めてきた。 「父さんを返せ!」 母が全力で首を締めているのが分かる。気を抜けば意識が飛びそうなくらい、全体重をかけて私の首を絞めている。私の家は裕福ではないが、それなりに楽しい生活を送ってきた。3人で山に登ったり、海に行ったり、釣りをしたり……。一瞬あのナイフの映像が浮かんだ。我に戻り、握りしめてるナイフの存在に気付いた。 (このままだと死ぬ) 必死に抵抗しようとしたら、ナイフが母の腹を刺さっていたのだ。母は倒れかかるように私の上に乗りしばらくして動かなくなった。私は2人も殺してしまった、しかも自分の家族を。どうしていいかも分からず、父と母を見つめる。
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