魔法のナイフ

6/6

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「友子がお前の家の金盗むって言って、その日から学校来なくなったから俺、お前の家に勝手に入ったんだよ。」 「うん。」 「そしたら、風呂場あたりからすごい匂いだったから覗いて見ると死んでる友子がいて……お前がやったのかよ?」 「死体は友子だけだったの?」 「なんだよ。友子の他にも殺してるのかよ!」 どうやら親の死体は見られていないようだ。彼に元気がないのは私が彼を殺してしまうかもしれないと思っているからだろう。こんなに好きなのに……。 「私はあなたとずっと一緒に居たい。そう思ったから殺したのよ。」 「何言ってんだよ。」 彼女はリュックの中からすっとナイフを取り出し た。 「これはね『願いが叶うナイフ』なの!これで人を殺せば願いが叶うんだよ!」 彼女の目と僕の目は合っていなかった。僕はそのナイフを突きつけられ友子のように刺されてしまうのではないかとパニックになってしまった。 「それをよこせ!」 揺れる観覧車。その中で必死に彼女からナイフを奪おうとするが刃先がこっちを向いている。抵抗するが相手は女ということもあり刃先の向きを変える事ができた。 「やめて!あなたを殺す気は無いの!」 彼女が何か言っている。この状況でナイフを向けられて、その言葉信じる事ができない。やっとの事でナイフを奪い取れると思った瞬間、風で大きく観覧車が揺れた。僕は床に倒れこんだ。 (あれ、ナイフがない!どこだ……) 上を見あげると彼女の心臓にナイフが刺さってい る。血まみれの手を見つめ腰を抜かした。その時、観覧車が一周回ってドアが空いた。ドアが開いた瞬間走り出して観覧車から抜け出した。そのまま遊園地の入り口まで走り出し、観覧車を見た。その観覧車のゴンドラを一つずつ目で追っていると彼女を見つけた。気持ちよく眠っているかのような表情で椅子に寄りかかっている姿がはっきり見える。僕はそのまま警察に行こうとして歩いていると、頭の後ろから 「ずっと一緒にいるよ」 と聞こえた気がした。 彼女は自分の体を捨て、願いを叶える事ができたのだ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加