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彩子は図書館を出ると、夕暮れの街を駅まで歩いた。
この頃は日が暮れるのが早く、風に冬の冷たさが混じっている。秋物の上着を羽織っても肌寒かった。
来年の2月には25歳になる。彩子は初めて自分の将来を案じた。
「結婚……か」
母親や近所に住む伯母が、時々見合い話を持ちかけてくる。わずらわしい身内のおせっかいが、有難く感じられてきた。
「のんきな娘だもの、世話を焼きたくもなるよね」
だけど、彩子が不安なのは結婚そのものではなく、それ以前の過程についてだった。果たして自分のような無精者に、男性と恋愛関係が結べるのか。
出会いの形はどうあれ、その相手と恋愛して結婚するのが自然な流れだと、彩子は思っている。つまり、恋愛できなければ結婚もできないという理屈になる。
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