寒稽古

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「おはようございます」 彩子が表に出ると、原田は明るく挨拶をして、着ているジャケットの前を開いて見せた。 「いかがです、彩子さん。リクエストにお応えして、空手着ですよ」 なるほどジャケットの下は空手着だ。 原田は随分嬉しそうだ。さては、この前の電話にまだウケているなと彩子は気が付き、横目で睨んだ。 「原田さんって、あんがい意地悪なんですね」 「アッハハ……それで、どうです。ご感想は」 「えっ」 正直、彩子は感動している。これほど似合うとは思わなかった。 それに、裸に直接着ているので、意外にも逞しい胸板が覗かれて困ってしまう。でも、それを悟られるとまたからかわれそうで、 「やっぱり黒帯だったのですね」 と、別のことを言ってごまかした。 「そりゃ10年もやってますから……」 「押忍!」 「おはようございまっス」 突然、雷のような大声が聞こえて彩子はビクッとする。 声のした方を見ると、長髪を後ろで縛った背がやたらに高い男と、短髪で背は低めだが、がっしりとした体格の男が、原田の車の前に立っていた。
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