24歳の午後

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今は昼休みだ。事務所の中で課長や工場長をはじめ数人の社員が休憩している。 気心の知れた人達ではあるが、その前で『オシャレしている』と言われては、たまらなく恥ずかしいものがあった。 何しろこの会社に就職して以来、彩子は野暮ったい女子で過ごしてきたのだから。あからさまに色気づいたと思われたら、いたたまれない。 「そうか、彩子ちゃんもいよいよ適齢期か。いい人見つけて結婚する年頃なんだなあ」 工場長が缶コーヒーを片手に、感慨深げに呟いた。 「ここにきた時は高校を出たばかりで、おぼこくて、子どもみたいだったけどなあ。そうか、もう結婚か~」 彩子は勝手に決めつける工場長の口に、梱包用のガムテープを貼り付けたい衝動に駆られた。 (結婚どころか恋愛もありません!) 「いやいや、結婚なんぞ延ばせるだけ先に延ばしなさいよ、彩子ちゃん」 工場長の隣に座る総務課長の田山(たやま)が、のんびりとした口調で言う。 田山課長は、昼休み中にも書類に目を通している。白髪交じりの頭にボールペンをトントンと当てながら、「ねえ主任さん」と、新井に話を向けた。
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