24歳の午後

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彩子は高校卒業後、地元の中小企業に就職した。包装容器類製造工場の事務所で働いている。 生産管理、経理、総務。小さな会社なので、あらゆる仕事を受け持っている。 来客を案内したり、お茶を出したり、雑務が重なると結構忙しい。 事務所には50代の課長、40代の主任、そして彩子の3人が入り、毎日かわり映えのない作業に従事している。 休日は映画を観にいくか、友達と食事をするか、今日のように図書館で、面白そうな本はないかとぶらぶらするのが主な過ごし方だった。 半年前まではファンタジーやSFと言ったジャンルの本を好んだが、この頃は違う。 恋愛小説を選ぶようになった。 それも極端にドラマチックな内容のものは避けて、ごく誰にでも起こりそうな恋愛を描いた本を。 親友の智子(ともこ)が結婚すると聞かされたのも半年前。 もちろん、本と親友の告白は関係している。同い年の、もうすぐ25歳になる彩子は大いに刺激を受けた。
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