イブのお見合い

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インド料理をベースにしたメニューは、スパイスが効いている。しかし辛すぎることはなく、和風にアレンジされたコース料理はとても食べやすい。 彩子は緊張しながらも、美味しくいただけた。それは、自分でも意外なことだった。 (いつも緊張すると食が細くなるのに、なぜだろう) デザートはヨーグルト風味のアイスクリーム。ボリュームのあるコースだが、すべて食べ切った。 「気持ちいいぐらいの食欲だ」 感心する原田に彩子は面映ゆくなるが、そういう原田もきれいに完食している。食べ物の趣味は合うかもしれないと思った。 「アベンチュリンは、緑水晶のことですね。インドで多く産出されるので、インド翡翠とも言います」 ウエイターがデザートの皿を下げると、原田が独り言のように呟く。指を組み、窓の外を見つめている。 「あ、だからインド料理がベースなのかな」 彩子はつい、友達と話すような調子になった。いつの間にか馴れ馴れしくなっていることに気づき、慌てて姿勢を正す。 そっと腕時計を見てみた。時刻は午後9時になろうとしている。
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