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彩子は、食事の前に交わした蛍石についての話を思い出す。もう少し、彼に聞きたかった。
「原田さんは、石がお好きなんですね」
「えっ」
意外なところを突かれたという表情になる。
「アベンチュリンという石も、よくご存知ですし、この……チョーカーも」
彩子はもう一度、チョーカーの革紐をつまんでみせた。
「そうです。石は、僕の最大の関心ごとです。鉱物は僕にとって、永遠の探求テーマかもしれません」
原田の瞳は、周囲のあらゆる光を集め、キラキラと輝き始めた。
「そうだ、山辺さん」
彼が急に、テーブルに身を乗り出す。
「僕が出張から帰ったら、一緒に山に行きませんか」
「……」
唐突な誘いに彩子は戸惑いながらも、反射的に頷いていた。
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