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卒業後も、ちょっとした行楽や旅行にも出かけたり、「デート」をしたものだ。
本当に楽しかった。
それが、去年の秋頃から智子の休日に他の予定が入るようになり、あまり会えなくなってしまう。
そして半年前、5月のある日。
久しぶりに会った智子に、つき合っている男性と婚約し、来年の3月に結婚すると聞かされたのだ。
待ち合わせた午後のカフェで、彩子は窓際のポトスを眺めていた。
なぜか、智子と眼を合わせられなかった。
それまでも感じていた。でも今、はっきりと彼女はきれいになっている――その姿は、窓からの日差しに映え、とても眩しくて。
高校時代の、あの逞しき親友はもういない。
目の前には、長い髪をきれいに結い、美しく化粧を施し、幸せに微笑む女性がいる。
だけど、彼女の温かで優しい眼差しはあの頃と何も変わらず、彩子を包んでくれる。まるで別れを告げられるような哀しさに、泣きそうな自分に戸惑っていた。
友達に対してそんな感情を抱くのは初めてだった。
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