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喫茶店に入り各々注文を済ませると、智子が彩子の耳元で囁いた。
「ねえねえ、相談の件だけど、皆に聞いてもらおっか?」
「え……」
囁くと言っても地声の大きな智子である。皆に丸聞こえだ。
「相談って?」
「なになに、何の話よ?」
まりとエリがきょろきょろする横で、雪村がずばりと言い当てた。
「男だな」
彩子はウッと言葉に詰まり、彼女を見返す。
「大当たり。でも彩子、この前の電話では彼氏はいないって言ってたよな。見合いでもしたか」
本当にいい勘をしている。こうなったら素直に頷くしかない。
「男! 彩子が男と付き合ってるの!?」
いつもクールなエリが、テーブルに身を乗り出す。
「ええ~、じゃあ彼氏がいないの私だけえ?」
まりはいじけたように指をくわえた。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
皆の反応に彩子は狼狽するが、智子は楽しそうに笑っている。こうなることを予測して、わざと大きな声で言ったのかもしれない。
(もう、智子ったら~!)
彩子は肘鉄をくらわすが、酔っ払いには全然きかず、かえって嬉しそうな様子だ。
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