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「だってほら、彩子はもっと俊敏な、スポーツマンタイプの男子が好きでしょ? お見合い相手の人は、すごく落ち着いてるっていうか、静かなタイプに思えるから」
智子はおそらく、彩子の好きなタイプとして初恋の彼、佐伯諒一をイメージしている。それは間違ってはいないけれど……
「ってことは、とりあえず妥協してるってわけか」
彩子はハッとして、雪村を見る。今の言葉は聞き捨てならなかった。
「違う! 私は原田さんのことを真面目に考えてる。いい加減な気持ちじゃない」
思いのほか大きな声になり、彩子自身が驚いた。雪村はもちろん、他の三人も面食らっている。
「あ……私、その」
急に恥ずかしくなり、俯いた。なにをこんなにムキになっているのか。
「ごめん、悪かったよ。お前はいつも真面目だもんな」
雪村がめずらしく取り繕っている。
彩子は自分自身に困惑しながら首を振った。ただ一度会っただけの相手なのだから、雪村のように考えても変じゃない。それなのに、どうしてか反発してしまった――
「まあ、ともかくさ、もう少し付き合ってから決めてもいいんじゃない?」
エリはカップを持ち上げ、冷静な声で総括した。
皆、うんうんと同意している。
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