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彩子が紅茶を噴きそうになり、まりもたじろぎながら、けんめいにリアクションする。
「そっ、それは重要なポイントだよね! うん、多分、じゃなくって、かなり……みたいな?」
雪村は表情を変えず、胸元のクロスをいじっている。
エリが呆れたように口を出した。
「まっさかアンタ、それだけじゃないでしょうね!」
雪村は答えず、
「カラダの相性は重要だよ」
彩子を見て、ニヤリと笑った――
ホテルを出ると、みぞれが降っていた。
彩子はコートの襟を合わて白い息を吐く。いつの間にか時間が経ち、終電近くになっていた。
「今度会う時は、智子の結婚式だね」
「うん、楽しみにしてる」
「またお喋りしようね」
口々に約束し、仲間達はそれぞれの場所へと帰っていく。少し、名残惜しげに。
別れ際、智子がポンポンと彩子の肩を叩き、ガッツポーズをしてみせる。彩子は笑顔で頷くが、熱を帯びた頭は別のことを考えていた。
雪村の言葉に、カーッとのぼせた。
相談を皆に持ち掛け、おかげで前向きになることができた。
それは良かったけれど……
今度は別の悩みで眠れなくなりそうな、複雑な心境の彩子だった。
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