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(いつだったか、智子が言ってたっけ)
――自分を知らない人間はダメ。知ろうともしないのはもっとダメ。
教室かグラウンドか、あるいは遠征先の試合会場での発言か思い出せない。いつになく厳しい表情だった。今の自分を叱る言葉のように、リアルに聞こえてくる。
空になったカップを見下ろし、なるほどなあと一人頷く。
(私は、男の人だけでなく、自分にも無関心なんだ)
コーヒースタンドを出た後、久しぶりにファション誌でも買おうと思い、駅の書店に寄った。
立ち読みの女性達の隙間から物色し、3冊ほど選んだ。
女性向けの雑誌は意外に重い。彩子はトートバッグを両手で抱え、図書館で何も借りなかったのが幸いだと、苦笑いする。
単純なことに、雑誌を買っただけで何となくわくわくした。何が始まるでもないのに、我ながら単純だなと彩子は思う。
バッグを肩にかけ直すと、急行電車に乗り遅れないよう、階段を駆け上がった。
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