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霧島涙のことを頼まれた時、本当は、少しだけ楽しみだった。
母も祖母も、父や双子の弟のことは口にしない。写真もない。
けど、双子だ。
言ってみればもう一人の僕。
鏡を見れば外見の予想はつく。性格だって似たようなものだろう。
僕の知らない場所で、もう一人の僕が生きている。奇妙だが悪い気はしない。
会ってみたかった。
嫌な奴でも捻くれ者でも構わない。話してみたかったのだ。
けれど、実際に会ってみたら、血の繋がらない他人以上に何もかもが違う、僕と同じ顔をした何か、だった。
常に笑顔で慇懃で、泥のような目をする男。同じ外見のはずなのにずっと美しくて、いるだけで人を魅了する。
理解不能で、気持ち悪くて、苛立って。
……妬ましい。
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