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3.不協和音
僕と霧島の二人だけが、同じ一日を何度も繰り返していた。
母や祖母に電話しても、暑さで頭がやられたと思われて終わった。
霧島を帰しても、八月一日になる寸前でスタート地点に戻る。
何をやってもダメだった。
もう何度ループしたかわからない。二十回を超えた辺りで数えるのをやめた。
自棄になって、塞ぎ込んで、擦り減ってゆく。いつ終わるとも知れない、理解不能なもう一人の自分との生活。気が狂いそうだ。
なのに、霧島は少しも変わらなかった。
いつも薄く笑って、時折無表情になり、淡々と日々をすごす。
暇潰しによく散歩しているらしく、ここら辺に詳しくなっていた。近所の人にも同級生にも大人気。そのたびに、僕が透明になってゆくようだ。
ふと気づく。
僕の代わりに霧島涙を配置した方が、上手くいくのではないか、と。
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