3人が本棚に入れています
本棚に追加
静まり返った部屋で、僕は自分の手を見た。……涙で濡れている。
数秒間、躊躇う。そして、家を飛び出した。
外は真っ暗だった。月明かりに照らされる、男にしては華奢な背中が遠くにあった。
「霧島!待てよ!どこに行くんだよ!」
霧島は立ち止まらない。聞こえていないのか、どうか。
散々好き勝手して、無視するなよ。腹が立つ!
「ルイッ!」
霧島が足を止め、ふり返った。硬直しているうちに加速する。驚いた顔が見えてくる。
僕は息を切らし、霧島の手首を強くつかんだ。
「ふざけんなよ!何が理解してくれると思ったのに、だ。あんただって僕のことわからないだろ!そもそも、」
全く同じ位置にある顔を、泥の瞳を睨む。
「僕とあんたは別の人間なんだよ!」
最初のコメントを投稿しよう!