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「双子の、弟?」
母から電話がかかってきたのは、三日前のことだった。
『前に何回か話題にしたでしょ。覚えてないの?』
「覚えてるけど。父親の方が引き取って、今は東京にいるんだろ」
僕ともう一人が産まれてすぐ両親は離婚し、それぞれ一人ずつ引き取った。
僕は母親の実家があるド田舎に連れていかれ、仕事で忙しい母のかわりに、ほとんど祖母に育ててもらった。
以来十七年間、一度たりともこのド田舎から出たことはないし、双子の弟にも会ったことがない。
『実は、むこうの親戚がバタバタ亡くなって、大変みたいなのよね。で、夏休みの間だけでもこっちで預かることになったの』
母の口調は軽いが、かなり深刻な話ではないか。思わず顔が強張る。
「いつ?」
『三日後』
「……は?」
母は仕事でいない。祖母も友達と旅行中だ。
この家にいるのは僕ひとり。
「ちょ、待って!ばあちゃんいないの知ってる?!」
「知ってるけど、こっちも忙しいの。じゃあねー」
ぶつり。つーっ、つー。
受話器を握り締め、呆然と立ち尽くす。
面識のない双子の弟と二人きり。……無理だ。
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