1.邂逅

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「夕飯できたぞ」  戸のむこうから声をかけるが反応がない。強めにノックしても応答なし。寝ているのだろうか。  覗くと、霧島は壁に寄りかかっていた。ヘッドフォンで音楽を聴いている。 「入るぞ、霧し……」  凍りついた。  僕と同じ顔には何の表情も浮かんでいない。漏れ聞こえる軽快なメロディーがあまりにも場違いだ。  ピクリと、霧島の指が動く。  目が合った。  冷えきった泥で満たした瞳が、ゆらりと揺れる。飲み込まれる。 「……ああ、ユイさんですか。気づかなくてすみません」  緊張が解け、ぐらりと足元が傾ぐ。壁に手をついてどうにか体を支えると、ヘッドフォンを外した霧島が隣に来た。 「大丈夫ですか?」 「平気。ただの目眩い」  動揺を悟られないように素っ気なく言うと、霧島が微笑む。異様な空気は綺麗にかき消えていた。
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