1.邂逅

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 夕飯は豚の生姜焼き、白飯、味噌汁。あと、作り置きの漬物。  霧島は物珍しげに食卓を眺め、箸を取った。 「料理、得意なんですか?」 「普通。これくらい、習えば誰でもできる」 「……習えば。習えば、ですか。なるほど」  嫌味か。  噛み砕いた漬物と一緒に苛立ちを飲み込む。言い争いはしたくない。 「てっきりレトルトか冷凍食品かと思っていました」 「……喧嘩売ってる?」 「いえ、そんなつもりは。……あ、このお漬物美味しいですね」 「それは祖母の」 「そうですか。素敵なおばあさまですね」  ほんの一瞬、霧島の目に暗いものがよぎった、ような気がした。  まばたきをすると、澄まし顔で品良く食事をしている。気のせいだろうか。  微妙な空気の中食事が終わり、それ以降は特に交流もなく、一日目が終わった。
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