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昨日と同じ景色。昨日と反対の位置関係。機敏で優雅な後ろ姿を見ていると、不安と苛立ちが増幅する。
ギリ、と歯噛みした。
「あれ、早坂!……と、誰?」
声にふりむくと、クラスメイトの女子数人がいた。全員目を丸くして、僕と霧島の顔を見比べている。
面倒くささに顔を顰めると、かつりと靴音を鳴らして霧島が僕の隣に来た。微笑み、丁寧に腰を折る。
「霧島涙と申します。ユイさんの親戚です」
途端、女子全員が顔を赤らめる。目線は霧島に釘付けで、媚びた甲高い声で喋り出す。
「早坂の親戚なんですかぁ?そっくり!」
「でも、早坂と違ってオーラがキラキラしてる~」
「今暇ですかぁ?道案内とかしますよ!」
ハートが飛びまくりの声に吐き気がした。
同じ顔なのに、この差。僕は空気同然だ。ちやほやされたいわけじゃないが、無性に苛々する。
霧島は柔らかい微笑と共に当たり障りのないことを言う。それが一層女子の気を惹くようだった。
馬鹿らしい。やってられない。
苛立ちながら立ち去ろうとした時、
「ところで、今日は何月何日ですか?」
「七月三十一日ですよ?」
八月の、一歩手前。
本来ならそれは、昨日の日付だった。
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