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私は唐突な申し出に戸惑う。
「…いいです」
「なんで?」
「だって先生…忙しいでしょ?」
「忙しいは忙しいけど、でもそれ、授業の備品でしょ?」
「けど先生新人だからやること多いんじゃない?」
私が言うと、先生が小さく溜め息を吐いた。
「君も俺を可愛い扱いか?」
形の良い眉を少し下げて、ちょっと不服げな先生。
そんなつもりで言ったわけではないのだけど…
そう。
そんなつもりで言ったわけではなかった。
でもその瞬間、なんとなく私の『反抗期』が頭をもたげた。
思いがけずドキドキさせられた仕返し?
『可愛い彼をちょっとからかってみたい』、なんて─
私はにやりとして呟く。
「だって先生実際可愛いもん…」
私の言葉に先生はもう一度溜め息を吐いて、
「可愛い扱いは止めなさい…」
と言った。
先生は案外怒っていたのかもしれないけれど、甘やかな声は怖さとは無縁だ。
むしろその少し眉を寄せて、唇を尖らせたような表情はなんだか拗ねた小さな子供みたいで可愛らしくて…
そりゃ中学生にもナメられるはずだ。
私は更に言いつのった。
「そういう顔するから中学生からまで「カワイー!」とか言われるんです。
正直、先生自分の見た目が可愛い系なの分かってて意識してやってんじゃないの?って見えますよ?
例えばそのワイシャツとネクタイの上からパーカー羽織っちゃうセンスとか、しかもパーカーの袖が長くて萌え袖になっちゃってるとことか、可愛い弟キャラ狙ってるようにしか見えない」
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