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「女の私から見ても憧れるような素敵な女の人。
そういう人と一緒になって、幸せになってくれたらいいな、と思ってるの。
私ね、先生が幸せでいてくれることを何より願ってるんだ。
私は先生のこと好きだけど…先生のために、先生が幸せでいるために出来ること、他に何もないから…」
「見てるだけなんだ?」
自分のサンダルの足元を見ながら揺花が頷く。
「そういうもの?」
「そういうもの。
だって…先生に迷惑かけたくない」
「迷惑かな?」
「先生と生徒だもん」
「そっか…」
先生と私も先生と生徒だけど、迷惑かどうかなんて考えたこともなかった。
そもそも私が先生にどうしたいのか、先生とどうなりたいのか、そんなことも考えたことないと思う。
この夏合宿だって、ただ先生の傍にいたい、先生を見ていたいと思って来ただけだった。
空に一番星が輝く。
私と揺花の間に海風が吹いた。
風が、今日は珍しくポニーテールに束ねた首筋を撫でて心地良い。
「戻ろ?暗くなってきた」
そう言って揺花が立ち上がる。
「うん」
私たちは玄関の引き戸を開けた。
* * *
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