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(『いいね』って何?)
よく分からない。
けれど…
その目映さに胸がドキンと鳴る。
「彼らのはオーストラリア訛りだね。分かんなくてもしょうがないよ、日本の学校では聞き慣れないから。
それより…」
彼は私に何事か話しかけるけれど、その甘やかな声が耳元を通り過ぎるだけで私は精一杯で、その内容は頭が動かず、全然入ってこなかった。
綺麗な指で柔らかな髪を掻き上げる美しい男の子は、まるで昔見た絵本の王子様を思わせる。
私は、生まれてから今までに感じたことのないような感覚で、ただただその様を夢でも見ているかのように見つめ立ち竦んでいた。
が、それも束の間。
(あっ!時間!)
私は不意に我に返り、腕時計を確認する。
(あと5分しかないじゃんっ!)
「ありがとうございました!失礼します!」
私は彼の言葉を遮って、一礼すると慌てて改札口へと走り出す。
「えっ、あぁ、うん」
一瞬王子様が大きな瞳を更に見開き、驚く表情が見えた。
(なんてスマートに対応出来るんだろ…
しかも…凄い…綺麗な男の子…)
塾に向かって走りながら私の胸はドキドキしていた。
それは、喋れなくて緊張したから?
あるいは走って心拍が上がったから?
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