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「あのね、舞奈。大人の恋愛ってのはそういうことじゃないから。舞奈はいつも通り舞奈らしくしてればいいんだよ」
「……
だって…昴くんばっかりずるい。いつも余裕で、私ばっかりドキドキさせられて…」
唇を尖らせて俯くと、昴くんは私の前にしゃがんで顔を覗き込む。
「余裕なんかないし。今だってそう。俺がどれだけ自制してるか分かる?
ずるいのは舞奈の方。純粋な可愛い顔して俺のこと誘惑して、どんだけ小悪魔なの」
そう言って私の顎を摘まむともう一度ちゅっと小さくキスをした。
「さて」
昴くんはさっと立ち上がってバッグとスーパーの袋を拾う。
「ペスカトーレ作ろうか」
そして私の脇をすり抜けながら囁く。
「続きはまた夜に、ね」
「ふぇっ!?」
昴くんがくすっと笑う。いつものキラキラの笑顔で。
「ほら早くおいで」
昴くんが私に手を伸ばす。
「うん!」
私は跳ねるように立ち上がると昴くんの手を取った。見つめ合い、もう一度口付けを交わす。
「ところで舞奈、イカ捌けるの?」
「うーん、多分。生物の授業で解剖したことがあるから」
「相変わらず君、いいな。頼もしいよ」
「もう!また私のこと『男前』とか言う」
「言ってない!言ってない!」
何てことないやりとりをしながらふたりキッチンに並ぶ。
「昴くん、包丁どこ?…の前に手洗いたい」
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