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あつあつのスープを一口すすってフランスパンに手を伸ばす。いい焼き具合だ。
「うまい! また料理の腕を上げたね」
「どういたしまして。……で、お仕事のほうは順調なの?」
「ああ。来月、新型車を発表する予定だ。価格も性能も、他社とは比較にならないよ」
「まあ、すごい。さすがあなたね!」
「優秀な社員たちががんばってくれているおかげさ」
経営する会社は順調そのもの。気持ちのいい別荘での休暇。美しく、気立てのよい妻。自分でいうのもなんだが、私は、誰もが羨む「成功者」だ。
「ごちそうさま。おいしかったよ」
「そういってもらえると、うれしいわ」
「どうだい、午後はビーチでひと泳ぎしないか?」
「そうね。じゃあ、新しい水着を披露しようかしら」
柔らかい陽射し。爽やかな風。ダイニングテーブルの向こうで幸せそうに微笑む妻。
そこで私は目が覚めた。
「AX204459、時間だ。さっさと起きろ!」
怒鳴り声を浴びながら、私は硬いベッドから起き上がる。あっというまの2日間だった。
資本主義が極限に達した結果、この国では貧富の差があまりにも大きくなりすぎた。下層階級に生まれた者は、低賃金で働く労働者として一生を終える。働いても働いても、決して抜け出せない貧困。夢も希望もない人生。
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