配給

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しかしそれでは労働者としての質が低下する……ようするに「死んだ目をした労働者は役に立たない」という理由で、政府主導のもと「夢と希望の配給」が行われるようになった。 下層階級に生まれた者は週に5日働き、残りの2日間をこの施設で過ごす。装置につながれ、夢の世界で生きることが義務付けられた。 ベッドから起き上がった私は、今週の労働命令書を受け取った。今日から5日間、プラスチック鉱山だ。重金属と化学物質にまみれながら山を掘り、チューブまで運ぶ作業。冷たい床の上で眠り、鉛のようなパンを冷めたスープで胃に流し込む5日間。 ……が、そんなことはどうでもいい。すべては夢なのだから。 輝かしい成功と素敵な別荘、そして美しく気立てのよい妻。 鉱山で見る5日間の悪夢が終われば、私はまた現実に戻ることができるのだから。
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