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オレは秘書に一礼して踵を返し、心晴れやかに地下駐車場に移動した。 するとまだ残っていた社長が、オレの車の前に仁王立ちした。 「御座成君っ!!  なぜだっ!!  報酬は十分過ぎるほど…  それに君の副社長就任も…」 「全て必要ありません。  お嬢さんもいりませんから。  …オレはこれから失くしたものを取り戻す旅に出ます」 「…な、なんだね、失くしたものって…」 「教えてやらないよ、このエロジジイッ!!」 当然のごとく、この社長は秘書を食いものにしていると言っていい典型的な輩だ。 言いたい事を言ってやってオレはすっきりした。 きっと、オレの子供の心の数値も上がったはずだと思い満足した。 オレはクラクションを盛大に鳴らした。 ―― おっ! また上がったんじゃないか?    たっのしいぃ―――っ!! ―― オレは有頂天になっていた。 社長は今は引き下がる様で、オレの車の前から身を遠ざけたが、 なんと発車しそうになったオレの車の前に、専務秘書を突き飛ばしたのだ。 何かをやりそうだったので、ブレーキペタルはキッチリと踏む準備をしていた。 ―― やれやれ… ―― と思いながら、 「殺人未遂で訴えてもいいんですよ」とオレが専務秘書に言うと、 「…はい、そうします…」と、苦笑いを浮かべて答えた。     
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